【福井・解体済】角惣…あわら温泉に消えた老舗旅館、渡り廊下に響いた女の声 福井県を代表する名湯・あわら温泉。その華やかな温泉街の中心に、かつて100年以上の歴史を誇りながらも、無残に朽ち果てていった巨大な旅館の廃墟がありました。「角惣(かどそう)」。
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【福井・解体済】角惣…あわら温泉に消えた老舗旅館、渡り廊下に響いた女の声
福井県を代表する名湯・あわら温泉。その華やかな温泉街の中心に、かつて100年以上の歴史を誇りながらも、無残に朽ち果てていった巨大な旅館の廃墟がありました。「角惣(かどそう)」。全国ネットのテレビ番組で紹介されたことで、一躍、日本で最も有名な心霊旅館の一つとなったこの場所には、一体どのような記憶が眠っていたのでしょうか。
噂される怪奇現象と有名な体験談
廃墟であった当時、この広大な旅館では、その場所に残された数多の想いが怪異となって現れると噂されていました。
- 離れへと続く、暗く長い渡り廊下で、女性のすすり泣く声が聞こえる。
- 地下の大浴場で、湯船に浸かる老婆の霊が姿を現す。
- 誰もいないはずの客室や廊下から、複数の人間の話し声や、衣擦れの音が聞こえる。
- 宴会場で、誰も弾いていないはずのピアノが鳴り出す。
- 敷地内に足を踏み入れると、急激な頭痛や吐き気、そして大勢に監視されているような感覚に襲われる。
- 撮影した写真に、無数のオーブや、窓からこちらを覗く顔が写り込む。
最も有名な伝説「渡り廊下の女」
この廃墟を一躍、全国区の心霊スポットへと押し上げたのが、2016年に放送されたテレビ番組『世界の怖い夜』で紹介された、「渡り廊下の女の霊」です。本館と離れの客室を結んでいた、暗く長い渡り廊下。その最も奥にある部屋から、女性のすすり泣く声が聞こえてくるというのです。
番組のロケ中に、タレントがこの声を聞いてパニックに陥る様子が放送されたことで、この噂は爆発的に拡散しました。「渡り廊下を歩いていると、背後から『どこへ行くの?』と女の声で話しかけられた」「奥の部屋を覗くと、暗がりに白い着物を着た女が座り込み、肩を震わせて泣いていた」など、あまりにも悲しげで、そして恐ろしい目撃談が数多く報告されていました。
大浴場に沈む老婆の霊
この旅館のもう一つの恐怖が、地下に広がる大浴場に出没するという「老婆の霊」です。ここは、かつて多くの湯治客が旅の疲れを癒した場所。しかし、廃墟となった後は、この世ならざる者たちの憩いの場と化してしまったのかもしれません。
「湯が抜かれ、空っぽのはずの湯船の中に、白髪の老婆が肩まで浸かって、こちらをじっと睨みつけていた」「洗い場の鏡に、自分の背後を通り過ぎる、腰の曲がった老婆の姿が一瞬映った」といった体験談があります。彼女は、在りし日の温泉の記憶を、今も追い求めているのでしょうか。
この場所に隠された歴史と呪われた背景
角惣旅館の成り立ち
「角惣(かどそう)」は、明治16年(1883年)に開湯した、あわら温泉の歴史と共に歩んできた、老舗の温泉旅館でした。木造の旧館と、鉄筋コンクリート6階建ての新館からなる大規模な施設で、最盛期には、多くの観光客や団体客で賑わい、あわら温泉を代表する旅館の一つとして知られていました。
しかし、時代の変化による団体旅行客の減少や、施設の老朽化により経営が悪化。平成22年(2010年)に、120年以上の長い歴史に、静かに幕を下ろしました。
心霊スポットになった“きっかけ”
この場所が心霊スポットとなったのは、廃業後、再利用されることもなく、巨大な廃墟として温泉街の中心に放置され、その異様な姿が注目されるようになってからです。
この旅館で、噂されるような殺人事件や、悲惨な事故があったという公的な記録はありません。 しかし、長年、多くの人々の想いが行き交った「旅館」という場所、そして、あわら温泉自体が過去に経験した大火(昭和31年)などの記憶が、廃墟というフィルターを通すことで、人々の心霊への想像力を掻き立てたのです。
そして、その知名度を決定的なものにしたのが、2016年の全国ネットのテレビ番組での放送でした。これにより、「角惣=心霊スポット」というイメージは全国に広まり、日本屈指の有名心霊旅館として知られるようになったのです。
【管理人の考察】なぜこの場所は恐れられるのか
単なる旅館の廃墟が、なぜこれほどまでに人々を恐怖させたのでしょうか。それは、この場所が**「華やかな記憶」と「朽ち果てた現実」の、あまりにも残酷な対比**を見せつけていたからです。
- 歴史的要因: この場所の歴史は、明治から平成まで、4つの時代を駆け抜けた、あわら温泉そのものの栄枯盛衰を象徴しています。かつては多くの人々の笑顔と歓声で満ちていたはずの大宴会場や客室が、今は静寂と荒廃に支配されている。この「失われた宴の記憶」への強烈な哀愁が、訪れる者に、そこにいないはずの人々の気配を感じさせるのです。
- 地理的・環境的要因: **温泉街のど真ん中に、突如として現れる巨大な廃墟。**この日常風景の中にある、圧倒的な非日常感。これが、見る者に言い知れぬ違和感と恐怖を与えていました。内部は、広大な空間が複雑に入り組んでおり、一度足を踏み入れると、方向感覚を失い、二度と出られないのではないかという、迷宮のような恐怖を感じさせました。
- 心理的要因: **「テレビで紹介された」**という事実が、訪れる者に「ここには本物が出る」という、極めて強力な先入観を与えます。その上で、「渡り廊下の奥の部屋」「地下の大浴場」といった、具体的な恐怖の舞台を知らされると、人は無意識のうちに、その場所で霊の気配を探してしまいます。風の音を「すすり泣き」と、暗がりの染みを「人影」と、脳が積極的に恐怖の物語と結びつけてしまうのです。
探索の注意点
現在の状況と物理的な危険性
- 【最重要】建物は全て解体済み: 心霊スポットとしてあまりにも有名になった「角惣」ですが、老朽化による倒壊の危険性や、景観への悪影響などから、2024年3月から解体工事が開始され、同年6月末頃には完全に更地になりました。
- 跡地は駐車場として活用予定: 跡地はあわら市が取得し、観光客向けの駐車場として整備される予定です。
- 不法侵入は厳禁: 解体工事中はもちろんのこと、更地になった後も、跡地は市の管理する土地であり、関係者以外の立ち入りはできません。
訪問時の心構えと絶対的なルール
- 絶対に不法侵入しない: 建物はもう存在せず、跡地は管理された土地です。興味本位で立ち入ることは、住居侵入罪(建造物等侵入罪)にあたる犯罪行為です。
- ネットの古い情報を鵜呑みにしない: 現在も廃墟が存在するかのような古い情報や動画を信じて、無駄足を踏まないようにしてください。
- 近隣の温泉施設・住民への配慮: 跡地は温泉街の中心部です。深夜にうろついたり、大声で話したりする行為は、観光客や住民の方々にとって多大な迷惑となります。
まとめ
あわら温泉の歴史と共に歩み、そして消えていった巨大旅館廃墟「角惣」。その恐怖の物語は、廃墟の解体と共に、物理的には終わりを告げました。しかし、あの渡り廊下で聞こえたという女の声は、これからも人々の記憶の中で、静かに響き続けるのかもしれません。
このスポットの近くにある、もう一つの恐怖
- 北潟湖(きたがたこ) 「角惣」跡地のあるあわら市に存在する、淡水と海水が入り混じる汽水湖。湖畔の道路に女性の霊が現れるという噂や、湖に引きずり込まれるといった怪談が絶えない、水辺の心霊スポットとして知られています。
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