相模湖に聳える廃墟の城 神奈川県相模原市、相模湖の崖上に、まるで中世ヨーロッパの古城のような異様な建物が聳え立っている。その名は「ホテルローヤル」。しかし、今やその華やかな響きとは裏腹に、関東最恐クラスの廃墟として、そして「悪魔城」という禍々しい異名で知られる心霊スポットである 1。
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相模湖に聳える廃墟の城
神奈川県相模原市、相模湖の崖上に、まるで中世ヨーロッパの古城のような異様な建物が聳え立っている。その名は「ホテルローヤル」。しかし、今やその華やかな響きとは裏腹に、関東最恐クラスの廃墟として、そして「悪魔城」という禍々しい異名で知られる心霊スポットである 1。
この場所の恐怖は、単一の怪談や伝説に由来するものではない。昭和の好景気を象徴する豪華絢爛な建築が、時を経て朽ち果て、自然に飲み込まれていく様そのものが、見る者に圧倒的な畏怖と不安を抱かせるのだ。湖上からもはっきりと認識できるその威容は、かつての栄華と現在の崩壊を同時に物語り、この廃墟を唯一無二の存在へと昇華させている。
歴史的背景:湖畔に築かれた夢の城
昭和が生んだリゾートの象徴
ホテルローヤルが建設されたのは、日本が高度経済成長の波に乗っていた1970年代とされる 3。当時、人気の観光地であった相模湖において、誰もが目を奪われるランドマークとして、崖の上に城を模した奇抜なデザインで誕生した 1。最上階にはレストランを備え、表向きは一般の宿泊施設、実質的にはラブホテルとして運営されていたという 3。これは、食堂施設を設けることで風俗営業の厳しい規制を回避するという、当時の時代背景を反映した巧みな経営戦略であった 3。
分割された王国と衰退
ホテルの成功は事業拡大へと繋がり、湖の対岸にはより一般的な観光ホテルとして「B館」が新設され、元々の城は「A館」となった 4。しかし、バブル経済の崩壊とその後の長い不況は、この湖畔の王国を容赦なく蝕んでいく 6。相次ぐリブランディングも虚しく、象徴であったA館(悪魔城)は2008年に閉業 3。B館も後を追うように2014年頃に閉業し、ホテルローヤルの歴史は完全に幕を閉じた 5。
怪奇現象・体験談:悪魔城が放つ雰囲気という恐怖
ホテルローヤルには、他の有名心霊スポットのように「オーナーが自殺した」「殺人事件があった」といった具体的な曰く付きの噂はほとんど確認されていない 3。この場所の恐怖は、物語ではなく、その空間全体が発する圧倒的な雰囲気にある。
- 城が持つ威圧感: 崖の上に聳え、湖を見下ろす城というロケーションそのものが、非日常的で近寄りがたいオーラを放っている。特に夕暮れ時や霧のかかった日に見るその姿は、まさしく「悪魔城」の名にふさわしい。
- 内部の荒廃: かつて侵入した探索者の記録によれば、内部は豪華だったであろう面影を残しつつも、激しく荒廃していたという 8。華やかだった空間が朽ち果てていく様は、栄枯盛衰の物悲しさと、取り残された時間の恐怖を感じさせる。
- 静寂と孤独: 観光地の中にありながら、完全に時が止まったこの空間は、訪れる者に強烈な孤独感と、「何か」に見られているかのような感覚を与えると言われている。
メディア・文献情報:二つの「ホテルローヤル」
文学作品との混同
「ホテルローヤル」と聞くと、桜木紫乃氏の直木賞受賞作を思い浮かべる人も多いだろう 10。しかし、あの小説の舞台は北海道釧路市のラブホテルであり、相模湖のこの廃墟とは全くの無関係である 12。小説のモデルとなったホテルはすでに取り壊されており、物語の中でのみその記憶を留めている 14。
ネット上での話題性
相模湖のホテルローヤルは、廃墟愛好家や心霊ファンの間ではインターネットを通じて広く知られる存在となった 1。特に近年では、厳重な警備により物理的な侵入が不可能になったため、ドローンによる空撮映像などが数多く公開され、「デジタル巡礼」の対象として新たな注目を集めている 3。
現地の状況・注意事項
現在の建物の状態
ホテルローヤル(A館)は2024年現在も廃墟として現存しているが、長年の放置により著しく老朽化が進んでいる。
立入禁止区域の有無
重要:敷地内は厳重に管理されており、機械警備も導入されているため、立ち入りは絶対に不可能である 。不法侵入は犯罪であり、極めて危険なため、絶対に行わないこと。
安全上の注意点
廃墟はいつ崩壊してもおかしくない危険な場所である。興味本位で近づくことは避けるべきである。
マナー・ルール
不法侵入はもちろんのこと、周辺でのゴミのポイ捨てや騒音など、近隣に迷惑をかける行為は厳に慎むこと。
訪問のポイント
おすすめの時間帯・季節
敷地内への立ち入りは不可能だが、その威容は対岸や湖上から望むことができる。特に、遊覧船に乗って湖から見上げる「悪魔城」は、安全かつ合法的にその雰囲気を味わうことができる唯一の方法と言えるだろう 。空気が澄んだ冬の晴れた日や、霧が立ち込める朝などが、より幻想的な姿を見せてくれるかもしれない。
周辺の関連スポット
- ホテルローヤルB館跡: A館の対岸に位置する。こちらも廃墟となっている 5。
- 廃ボーリング場: ホテルローヤルへ向かう道中には、同じく昭和の時代に取り残されたボーリング場の廃墟も存在し、一帯が時代の流れから取り残された場所であることを物語っている 。