京都市右京区、風光明媚な嵯峨野の一角に、その建物は静かに佇んでいます。1970年代に建てられたごく普通の外観の分譲マンション。しかし、この場所は「メタボ広沢」という奇妙な通称で呼ばれ、京都のみならず全国の怪談好きの間で知られる、最恐の心霊スポットとして悪名を馳せています。
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京都市右京区、風光明媚な嵯峨野の一角に、その建物は静かに佇んでいます。1970年代に建てられたごく普通の外観の分譲マンション。しかし、この場所は「メタボ広沢」という奇妙な通称で呼ばれ、京都のみならず全国の怪談好きの間で知られる、最恐の心霊スポットとして悪名を馳せています。オーナーの娘が飛び降りたという悲劇を核とし、数々のメディアで語られてきたこの場所は、現代的なコンクリートの建造物が、古都の闇に新たな恐怖の1ページを刻んだ象徴的な存在です。
歴史的背景
場所の歴史
「メタボ広沢」は、京都市右京区嵯峨新宮町に実在する8階建ての分譲マンションです。1970年代(竣工年には1974年と1977年の二つの説があります)に建設された、鉄骨鉄筋コンクリート造の堅牢な建物です。その奇妙な通称の由来は定かではありません。「メタボ」という言葉が一般化したのは建物の完成よりずっと後の時代であり、後年になってから、その不気味な評判と共に付け加えられたものと考えられています。
心霊スポット化の経緯
このマンションが一躍、全国区の心霊スポットとなった最大のきっかけは、怪談実話集『新耳袋』シリーズで「京都の幽霊マンション」として取り上げられたことでした。さらに2005年には、そのエピソードを基にした映画『怪談新耳袋 劇場版 幽霊マンション』が公開され、その恐怖のイメージは決定的なものとなります。しかし、すべての噂の根源にあるのは、より古くから語り継がれてきた一つの悲劇です。それは、このマンションが建てられて間もない頃、最初のオーナーの娘が建物から身を投げ、その命を絶ったというものでした。この痛ましい出来事が、すべての怪異の始まりとされています。
怪奇現象・体験談
主な現象の種類
メタボ広沢で語られる怪異の中心には、常に一人の若い女性の霊が存在します。その姿は、黒い服に長い黒髪の女性として語られることもあれば、白いワンピース姿で目撃されたという重要な証言も存在します。この霊にまつわる最も特徴的な現象は、非常に具体的かつ反復的です。まず、深夜になると、誰もいないはずなのに「ドンッ」という、人体が地面に叩きつけられるかのような生々しい衝撃音が繰り返し聞こえると言われています。これは、最初の投身自殺の瞬間が、今もなおこの場所にこだましているかのようです。
代表的な体験談
このマンションの怪異には、奇妙な「ルール」が存在すると言われています。その一つが、幽霊の出現が必ず「午前4時」に起こるというもの。丑三つ時とは異なるこの時間設定が、伝説に妙なリアリティを与えています。また、映画化された『新耳袋』の物語では、「深夜0時までに建物の前に引かれた白線の内側に戻らなければ呪われる」という、ゲームのような恐怖のルールが設定され、物語をより一層恐ろしいものにしています。映画では、この霊は30年ほど前に行方不明になった「愛」という名の少女の霊とされ、引っ越そうとする住人を次々と呪い殺す存在として描かれました。
地元の伝承
地元で古くから囁かれているのは、やはりオーナーの娘の投身自殺の話です。この悲劇がすべての始まりであり、彼女の無念の魂が今もこの建物を彷徨い、訪れる者にその存在を知らせているのだと信じられています。
メディア・文献情報
このマンションの知名度を全国的なものにしたのは、間違いなく怪談実話集『新耳袋』とその劇場版映画です。この作品によって、単なる地元の噂話だった怪異が、具体的な物語とルールを持つ、体系化された恐怖譚へと昇華されました。現在では、多くの心霊系YouTuberやオカルトサイトがこの場所を取り上げており、新たな体験談(真偽は不明)が次々と生み出され、伝説はインターネット上で増幅され続けています。
現地の状況・注意事項
現在の建物・敷地の状態
「メタボ広沢」は廃墟ではありません。現在も多くの住民の方々が生活を営んでいる、ごく普通の現役の分譲マンションです。インターネット上の噂だけを信じて、廃墟だと思い込むのは非常に危険です。
立入禁止区域の有無
建物全体が住民の方々の私有地です。部外者の立ち入りは一切認められていません。敷地内への無断侵入は不法侵入という犯罪行為にあたります。
安全上の注意点
この場所における最大の危険は、霊的なものではなく、法的なトラブルです。肝試し目的で敷地内に侵入し、警察に通報されるケースが後を絶ちません。面白半分で訪れることは絶対にやめてください。
マナー・ルール
最も重要なことは、ここが人々の生活の場であるという事実を理解することです。深夜に大声で騒いだり、ゴミを捨てたり、カメラを向けたりする行為は、住民の方々にとって計り知れない迷惑と恐怖を与えます。心霊スポット巡りという名目で、他人の平穏な生活を脅かすことは決して許される行為ではありません。
訪問のポイント
おすすめの時間帯・季節
この場所は、観光地や探索を楽しむ場所ではありません。そのため、訪問を推奨できる時間帯や季節は存在しません。住民の方々の生活を守るためにも、現地を訪れることは控えるべきです。
周辺の関連スポット
「メタボ広沢」が位置する京都市右京区は、古都の闇が色濃く残るエリアでもあります。
- 清滝トンネル: 「関西最恐」とも呼ばれる有名な心霊トンネル。女性の霊が車のボンネットに落ちてくる、行きと帰りでトンネルの長さが変わるなど、数々の恐ろしい噂が語り継がれています。
詳細はこちらから
- 化野念仏寺(あだしのねんぶつじ): 嵯峨野の奥に位置し、かつて風葬の地であった場所に、数千体の無縁仏の石仏が並ぶ寺院。その光景は、美しくも物悲しい独特の雰囲気を醸し出しています。