大阪府大阪市北区の梅田地下街にあった地下広場。1963年の地下街開業時から2018年の閉鎖まで約55年間、梅田地下街の中心的な待ち合わせ場所として親しまれた。しかし、1990年代頃から地下街特有の陰湿な雰囲気と過去の事件・事故により、都市部では珍しい心霊スポットとしても知られるようになった。
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大阪府大阪市北区の梅田地下街にあった地下広場。1963年の地下街開業時から2018年の閉鎖まで約55年間、梅田地下街の中心的な待ち合わせ場所として親しまれた。しかし、1990年代頃から地下街特有の陰湿な雰囲気と過去の事件・事故により、都市部では珍しい心霊スポットとしても知られるようになった。現在は改装されて別の名称となっているが、跡地周辺では今も不可解な現象が報告されている。
歴史的背景
泉の広場は1963年(昭和38年)に梅田地下街(ホワイティうめだ)の開業と同時に設置された地下広場である。中央に小さな噴水があったことから「泉の広場」と名付けられ、梅田駅周辺の複数の鉄道路線を結ぶ地下街の中心部に位置していた。開業当初は明るく開放的な空間として設計されたが、地下という環境の特性上、次第に薄暗く陰湿な雰囲気を醸し出すようになった。1970年代から1980年代にかけては大阪のサラリーマンやOLの待ち合わせ場所として非常に人気が高く、平日の夕方には数百人が利用することもあった。しかし、1980年代後半頃から広場周辺で不審死や自殺事件が相次ぎ、1990年には深夜に一人で待っていた女性が行方不明になる事件も発生した。1990年代に入ると、地下街の構造上風通しが悪く、湿気がこもりやすい環境が心霊現象を引き起こしやすいとされ、広場で不可解な現象を体験する人が増加した。2000年代には梅田地下街の再開発が進み、2018年に泉の広場は閉鎖され、現在は「うめきた広場」として改装されている。しかし、跡地周辺では現在も過去の記憶に関連した心霊現象が報告され続けている。
怪奇現象・体験談
泉の広場では、地下街特有の閉塞感と過去の事件・事故が相まって、様々な心霊現象が報告されていた。最も多かったのは、約束の時間になっても現れない人を待ち続ける霊の目撃談で、特に1980年代から1990年代の服装をした女性の霊が噴水の周りでずっと誰かを待っているような姿が頻繁に目撃されていた。また、深夜の地下街で一人歩きをしていると、背後から足音が聞こえてくるが振り返ると誰もいないという現象も多数報告されていた。
代表的な体験談として、終電間際に泉の広場で友人を待っていたOLが、噴水の向こう側に立っている女性に気づき、挨拶をしようとしたところ、その女性が突然消失し、後で調べるとその女性の特徴が数年前に地下街で行方不明になった人物と一致していたという不可解な現象がある。また、深夜に地下街を通行していたサラリーマンが、泉の広場で1980年代のファッションに身を包んだ大勢の人々が談笑している光景を目撃したが、近づいてみると誰もおらず、ただ噴水の音だけが響いていたという幻想的な体験も報告されている。さらに、広場で写真撮影を行った際、現像した写真に写るはずのない複数の人影が写り込んでおり、その中には明らかに現代ではない服装の人物も含まれていたという不気味な現象も複数回報告されていた。地下街関係者の間では「泉の広場には何十年間もの待ち人の想いが蓄積されている」「特に約束を果たせずに亡くなった人の霊が集まりやすい」といった解釈が一般的であった。
メディア・文献情報
泉の広場の心霊現象は1990年代初頭から関西圏のローカル番組で紹介され始め、関西テレビや毎日放送の心霊特集で取り上げられたことがある。心霊研究家の木原浩勝氏も調査を行い、著書で「都市部の隠れた心霊スポット」として言及している。ただし、梅田という大阪の中心地にある商業施設という性質上、センセーショナルな取り上げ方は控えられる傾向にあった。また、大阪の都市史や地下街文化の研究においても、泉の広場は重要な場所として位置づけられており、心霊現象についても都市伝説の一部として言及されることがある。インターネット上では地下街利用者による体験談が散発的に投稿されており、特に梅田で働くサラリーマンやOLからの報告が目立っていた。YouTubeでも一部の心霊系チャンネルで検証動画が制作されたが、商業施設内という性質上、本格的な調査は困難であった。2018年の閉鎖後は「消えた心霊スポット」として振り返られることが多く、現在では大阪の都市伝説の一部として語り継がれている。
現地の状況・注意事項
現在の泉の広場跡地は「うめきた広場」として改装されており、以前とは全く異なる空間となっている。ただし、周辺の地下街構造は基本的に変わっておらず、跡地周辺では現在も軽微な心霊現象が報告されている。現在も営業中の商業施設のため、心霊スポット目的での不適切な行動は営業の妨げとなり、他の利用者への迷惑となる。地下街は24時間営業ではなく、深夜から早朝にかけては閉鎖されるため、この時間帯の立入りはできない。また、商業施設内での長時間の滞在や不審な行動は、警備員による注意や退去要請の対象となる可能性がある。写真撮影についても、商業施設としてのルールに従い、他の利用者や店舗への配慮が必要である。最寄り駅はJR大阪駅、阪急梅田駅、阪神梅田駅、大阪メトロ梅田駅で、アクセスは極めて良好である。周辺は大阪の中心商業地区のため、昼夜を問わず人通りが多く、騒音や迷惑行為は厳禁である。過去に泉の広場で起きた事件や事故の関係者への配慮を忘れず、敬意を持った行動が求められる。
訪問のポイント
現在の跡地への訪問は、泉の広場の歴史と大阪の地下街文化を学ぶ目的で行うことが適している。単なる心霊体験を求めるのではなく、55年間にわたって大阪市民に親しまれた場所の記憶を辿る文化的な体験として訪問すべきである。アクセスは各線梅田駅から地下街経由で徒歩数分と極めて便利である。周辺には梅田スカイビルや阪急百貨店などの観光地もあり、大阪観光と組み合わせることも可能である。訪問時は泉の広場で過ごした無数の人々の思い出や、この場所で起きた様々な出来事への敬意を忘れないことが重要である。また、大阪の戦後復興と都市開発の歴史を学ぶ場所としても価値があるため、地下街の発展史について事前に学習しておくとより深い理解が得られる。現在のうめきた広場も含めて、この場所が大阪市民にとって特別な意味を持つ場所であることを理解し、文化的敬意を持って見学することが最も大切である。心霊現象の有無に関わらず、大阪の都市文化の一部として、この場所の歴史と記憶を大切にする気持ちで訪問することが重要である。