「肝試し」が、本当の「悲劇」に変わってしまった場所。 大阪府柏原市、JR関西本線が奈良県との県境を越える場所に、二つのトンネルが並んでいます。一つは今も電車が走り抜ける現役のトンネル。そしてもう一つが、明治時代に造られ、今は固くその口を閉ざした煉瓦造りの「旧・芝山トンネル」。
...
「肝試し」が、本当の「悲劇」に変わってしまった場所。
大阪府柏原市、JR関西本線が奈良県との県境を越える場所に、二つのトンネルが並んでいます。一つは今も電車が走り抜ける現役のトンネル。そしてもう一つが、明治時代に造られ、今は固くその口を閉ざした煉瓦造りの「旧・芝山トンネル」。この古い隧道こそが、心霊スポットとして知られる場所です。しかし、この場所を語る上で決して忘れてはならないのは、噂を信じた若者たちが引き起こし、そして命を落とした、あまりにも痛ましい現実の事故なのです。
歴史的背景
- 場所の歴史 心霊スポットとして語られるのは、JR関西本線の「河内堅上駅」と「高井田駅」の間に存在する、旧・芝山トンネル(通称:旧柏原トンネル)です。 このトンネルは、大阪鉄道(現在のJR関西本線の前身)によって1890年(明治23年)に建設された、130年以上の歴史を持つ煉瓦造りの隧道です。当初は単線でしたが、1923年(大正12年)の複線化に伴い上り線(大阪方面)のトンネルとして利用されました。 その後、老朽化や車両の大型化などの理由から、1966年(昭和41年)に隣接して新しい上り線トンネルが完成。それに伴い、明治時代から使われてきた旧トンネルはその役目を終え、廃線となり封鎖されました。
- 心霊スポット化の経緯 明治時代に造られた古いレンガ造りの廃トンネルという、その存在自体が心霊スポットとしての条件を十分に満たしていました。「建設工事で多くの犠牲者が出た」「人柱が埋められている」といった、廃トンネルにありがちな噂が囁かれるようになりました。 しかし、この場所が決定的に「危険な心霊スポット」として全国に知れ渡ったのは、2013年7月21日に発生した死傷事故がきっかけです。 肝試しに訪れた10代の少年グループ13人が、道に迷った末、封鎖された旧トンネルではなく、隣接する現役のトンネル内に侵入。そこに難波発王寺行きの普通列車が進入し、グループのうち2名をはね、1名が死亡、1名が重傷を負うという大惨事になりました。 この「心霊スポットでの肝試しが招いた現実の悲劇」は大きく報道され、面白半分で危険な場所に立ち入ることの恐ろしさを世に知らしめることとなりました。
怪奇現象・体験談
このトンネルにまつわる怪奇現象の噂は、現実の事故の陰に隠れがちですが、以下のようなものが語られています。
- 主な現象の種類
- 作業員の霊:建設当時に亡くなったとされる作業員の霊が、ツルハシを持った姿で現れる。
- 人影と声:封鎖された旧トンネルの暗闇の中から、こちらを覗き込む人影が見えたり、助けを求める声が聞こえたりする。
- オーディオの異常:近くを車で通ると(※鉄道トンネルなので直近の道路は限られます)、カーラジオにノイズが入り、人のうめき声のようなものが聞こえる。
- 代表的な体験談(事故以前の噂) 「旧トンネルがまだ簡単に近づけた頃、入口の前に立つと、奥から風と共に『こっちへ来るな』というような低い声が聞こえた気がした。また、トンネルの写真を撮って確認すると、入口のアーチ部分に苦しそうな顔のようなシミが写り込んでいた」 しかし、現在ではこれらの噂よりも、実際に起きた死亡事故の事実の方が、何よりもこの場所の恐ろしさを物語っています。
メディア・文献情報
- テレビ番組での紹介歴 全国区の心霊番組で大々的に扱われることは少ないですが、2013年の死傷事故は、ニュース番組や新聞各社によって全国的に報道されました。
- ネット上での話題性 廃線・廃墟マニアのウェブサイトやブログでは、その歴史的価値(明治時代の煉瓦隧道)と心霊スポットとしての知名度から、古くから知られた存在でした。事故以降は、「日本で最も危険な心霊スポットの一つ」として、注意喚起と共に語られることがほとんどです。
現地の状況・注意事項
- 現在の建物・敷地の状態【最重要】 旧・芝山トンネルの坑口(出入口)は、現在は頑丈な金網やコンクリートブロックで固く封鎖されており、内部に立ち入ることは絶対にできません。 そして、そのすぐ隣には、現在も多数の電車が高速で通過する現役のJR関西本線のトンネルがあります。
- 立入禁止区域の有無【最重要】 旧トンネル、現役トンネルを問わず、鉄道敷地内への立ち入りは鉄道営業法で固く禁じられています。 これは肝試し以前に、明白な犯罪行為です。
- 安全上の注意点およびマナー・ルール
- 絶対に線路に近づかない・立ち入らない。 2013年の事故は、この大原則を破ったために起きました。電車の通過音はトンネル内では聞こえにくく、気づいた時には手遅れになります。命を落とす危険性が極めて高い、愚かで危険な行為です。
- 近隣への配慮:現場周辺は山間の静かな集落です。夜間に訪れて騒いだり、路上駐車をしたりする行為は、近隣住民の方々への多大な迷惑となります。
訪問のポイント
- おすすめの時間帯・季節 この場所への訪問は、昼夜を問わず一切推奨されません。 過去の悲劇を教訓とし、興味本位で危険な場所に近づくことは絶対にやめてください。
- 周辺の関連スポット
- 大和川:トンネルのすぐ近くを流れ、鉄道も鉄橋で渡ります。川沿いは散策できる場所もあります。
- 柏原市立歴史資料館:地域の歴史を学ぶことができます。心霊スポットではなく、地域の正しい歴史に触れることをお勧めします。