東京都練馬区の石神井公園内にある「三宝寺池」。武蔵野の面影を色濃く残すこの美しい池は、都民の憩いの場として親しまれています。しかしその水面下には、室町時代の悲しい伝説が眠っており、都内でも有数の心霊スポットとして知られています。
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東京都練馬区の石神井公園内にある「三宝寺池」。武蔵野の面影を色濃く残すこの美しい池は、都民の憩いの場として親しまれています。しかしその水面下には、室町時代の悲しい伝説が眠っており、都内でも有数の心霊スポットとして知られています。その心霊現象の噂は、かつてこの地にあった石神井城の落城と、父の後を追い池に身を投げたとされる「照姫」の伝説に由来するものがほとんどです。歴史の悲劇と怪談が融合した、東京23区内では稀有な場所と言えるでしょう。
歴史的背景
場所の歴史
三宝寺池の歴史は、ほとりに築かれた石神井城と分かちがたく結びついています。この城は室町時代、この一帯を支配していた名族・豊島氏の拠点でした。文明9年(1477年)、関東で争乱が起きると、城主であった豊島泰経は、江戸城を築いたことで知られる名将・太田道灌と対立。激しい戦いの末に豊島軍は敗れ、石神井城は落城しました。この落城の際、城主・豊島泰経は白馬にまたがり金の鞍と共に三宝寺池に入水し、その娘である照姫もまた父の後を追って身を投げた、という悲劇的な伝説が生まれました。ただし、史実では泰経は落城時に城から脱出し、その後行方知れずになったとされており、照姫という娘の実在も確認されていません。この伝説は、明治時代に書かれた小説が元になっているという説が有力です。
心霊スポット化の経緯
この場所が心霊スポットとして語られるようになったのは、ひとえに「照姫伝説」の存在によります。悲劇のヒロインである美しい姫が身を投げたという物語は人々の心を強く打ち、その無念の魂が今も池のほとりを彷徨っているのではないか、という噂が自然と生まれました。公園内には伝説を裏付けるかのように「殿塚」と「姫塚」が存在し、夜になると街灯も少なくなる不気味な雰囲気が、心霊スポットとしての評判をさらに強固なものにしていきました。
怪奇現象・体験談
主な現象の種類
- 女性の霊の目撃: 白い着物やワンピースを着た、髪の長い女性の霊が池のほとりに佇んでいる、という目撃談が最も有名です。この霊は照姫であると言われています。
- 心霊写真: 特に池に浮かぶ厳島神社の鳥居周辺で写真を撮ると、オーブや人影のようなものが写り込むことがあると言われています。
- 水面に引きずり込まれる感覚: 池を覗き込んでいると、水の中に引きずり込まれるような感覚に襲われることがある、という噂もあります。
- 呪いの品: 公園内の祠の木に、呪術に使われたような不気味な物が打ち付けられているのが目撃されたこともあります。
代表的な体験談
友人たちと夜の公園を訪れ、鳥居の前で記念写真を撮ったところ、後で確認するとありえない場所に人の顔のようなものが写り込んでいた、という話はよく語られます。また、池のほとりで白い服を着た女性がこちらを見て手招きをしていた、という直接的な目撃談も報告されています。
地元の伝承
この場所の伝承の中心は、やはり「照姫伝説」です。父・泰経が池に沈めたとされる「金の鞍」が、今も池の底で輝いているのが見える、という話も伝わっています。また、照姫伝説が生まれる以前から、池には「ヌシ」と呼ばれる巨大な蛇や、頭に鳥居を乗せた魚が棲んでおり、それを捕まえようとすると祟りがある、という古い言い伝えも残っています。
メディア・文献情報
テレビ番組での紹介歴
全国的に有名な心霊番組で大々的に取り上げられたという記録はあまりありませんが、地域の歴史や伝説を紹介する番組で触れられることがあります。
書籍・雑誌での掲載歴
照姫伝説は、明治時代に書かれた小説『照日松』が元になっているとされ、文献との関わりが深い場所です。また、東京の都市伝説や心霊スポットを扱う書籍や雑誌では、定番の場所として必ずと言っていいほど紹介されます。
ネット上での話題性
インターネット上での知名度は非常に高く、特に人気YouTubeチャンネル「ゾゾゾ」が訪れたことで、若い世代にも広く知られるようになりました。個人の体験談を綴ったブログやウェブサイトも無数に存在します。
現地の状況・注意事項
現在の建物・敷地の状態
現場は都立石神井公園として美しく整備されており、日中はボート遊びや散策を楽しむ人々で賑わっています。池自体は国の天然記念物に指定されており、釣りなどは禁止されています。石神井城の主郭があったとされる場所は、史跡保護のためにフェンスで囲まれ、立ち入りが制限されています。
立入禁止区域の有無
公園自体は公共の場所ですが、夜間は閉鎖されるエリアや、前述の城跡のように保護のため立ち入りが禁止されている場所があります。現地の看板や指示に従ってください。
安全上の注意点
日中は安全な公園ですが、夜間は街灯が少なく非常に暗くなります。足元が悪く、池に転落する危険もあるため、夜間の訪問は推奨されません。
マナー・ルール
多くの人が利用する公共の公園です。肝試し気分で大声で騒いだり、ゴミをポイ捨てしたりする行為は厳禁です。公園内にある祠や塚は信仰の対象でもありますので、敬意を払って静かに行動してください。
訪問のポイント
おすすめの時間帯・季節
公園の自然や歴史的な雰囲気を楽しむなら、日中の明るい時間帯が最適です。毎年春には、照姫伝説を再現した時代行列が練り歩く「照姫まつり」が開催され、多くの人で賑わいます。
周辺の関連スポット
- 石神井城跡: 三宝寺池の南側に残る城跡。土塁や空堀の跡を見ることができ、往時を偲ぶことができます。
- 殿塚・姫塚: 豊島泰経と照姫を祀ったとされる塚。伝説の中心地であり、訪れる際には手を合わせたい場所です。
- 厳島神社: 三宝寺池の中に浮かぶように建てられた神社。美しい景観ですが、心霊写真が撮れるとの噂もあります。