富山県南砺市にあった温泉施設跡。1960年代に開業した山間部の小規模鉱泉宿だったが、1980年代に廃業して以降、長期間廃墟として放置されていた。営業中の不審死事件や廃業後の事故により複数の霊が目撃され、富山県内でも有数の心霊スポットとして恐れられていた。
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富山県南砺市にあった温泉施設跡。1960年代に開業した山間部の小規模鉱泉宿だったが、1980年代に廃業して以降、長期間廃墟として放置されていた。営業中の不審死事件や廃業後の事故により複数の霊が目撃され、富山県内でも有数の心霊スポットとして恐れられていた。現在は解体されているが、跡地周辺では今なお不可解な現象が報告されている。
歴史的背景
坪野鉱泉は1962年(昭和37年)に富山県南砺市(旧福野町)の山間部に開業した小規模な温泉宿である。地元で湧出する炭酸泉を活用した湯治場として開設され、昭和40年代には富山県内外から湯治客や観光客が訪れる人気の温泉地となっていた。木造2階建ての本館と別館からなる施設で、最盛期には年間約2万人の宿泊客を受け入れていた。しかし、1978年に本館2階の客室で宿泊客の不審死事件が発生し、その後も1981年、1984年と立て続けに客室での死亡事例が相次いだ。さらに1985年には温泉施設での溺死事故、1987年には厨房での火災事故により従業員1名が死亡するなど、不幸な出来事が続いた。これらの事件により客足が遠のき、1988年に経営破綻により廃業となった。廃業後は建物が放置され、1990年代初頭から心霊現象の目撃談が報告されるようになった。2010年に南砺市により安全上の理由で解体撤去されたが、現在も跡地周辺では不可解な現象が続いている。
怪奇現象・体験談
坪野鉱泉では、営業中の事件関係者や事故死者による心霊現象が数多く報告されていた。最も頻繁に目撃されたのは、浴衣姿の中年男性の霊で、廃墟となった廊下をゆっくりと歩きながら客室を探しているような行動を取っていたとされる。また、温泉施設からは原因不明の湯の音や人の声が聞こえてくるという現象も多数報告されていた。
代表的な体験談として、廃温泉施設に侵入した心霊調査グループが、フロント付近で着物姿の女将らしき女性と遭遇し、その女性が丁寧にお辞儀をして「お疲れ様でございました、ゆっくりお休みください」と話しかけてきたため、恐怖のあまり逃げ出したという証言がある。また、2階の客室で写真撮影を行った際、デジタルカメラの液晶画面に布団の中に人影が映り、その人影が苦しそうに手を伸ばしている姿が確認されたという不気味な現象も報告されていた。さらに、温泉の浴室では、深夜に「もう一度入らせて」という男性の声が聞こえ、浴槽には誰もいないのに湯が波打ち、湯気が立ち上っているという超常現象も目撃されていた。廃墟探索者の間では「この温泉で亡くなった人々の霊が、生前の湯治を続けている」「特に不審死した宿泊客の霊は、自分の死を理解できずに宿泊を続けている」といった解釈が一般的であった。解体後の現在でも、跡地周辺では「温泉施設の建物が見える」「硫黄の匂いがする」「湯の音が聞こえる」といった幻覚・幻聴現象が報告されている。
メディア・文献情報
坪野鉱泉は1990年代後半から北陸地方のローカル番組で心霊スポットとして紹介され、その後全国ネットの心霊番組でも取り上げられるようになった。北日本放送の心霊特集やテレビ朝日の「最恐映像ノンストップ」などで詳しく紹介され、実際に不可解な現象が撮影されたこともある。心霊研究家の木原浩勝氏や池田武央氏も実地調査を行い、複数の著書でこの廃温泉について詳述している。富山県内の心霊スポットを紹介する書籍では必ず上位にランクインしており、「富山最恐の廃温泉」として紹介されることが多かった。インターネット上では2000年代初頭から体験談が多数投稿されており、心霊スポット検索サイトでは富山県内でも人気の高いスポットとして注目されていた。YouTubeでも多くの心霊系チャンネルで検証動画が投稿され、実際に不可解な現象が撮影されたケースもあった。また、富山県の温泉史や観光史の観点からも言及されることがあり、地方温泉地の衰退を象徴する事例として研究対象となっている。解体により物理的には存在しなくなったが、「消えた心霊スポット」として現在でも多くの心霊愛好家に記憶されており、富山県の心霊スポット史において重要な位置を占めている。
現地の状況・注意事項
現在の坪野鉱泉跡地は更地となっており、南砺市が管理している。跡地には安全柵が設置され、「立入禁止」の看板が複数設置されている。解体により建物の倒壊リスクは解消されたが、跡地への無断立入りは不法侵入罪にあたる可能性がある。周辺は山間部の過疎地域となっているため、夜間は街灯が少なく非常に暗い。また、山間部のため携帯電話の電波が不安定な箇所があり、緊急時の連絡が困難な場合もある。クマやイノシシなどの野生動物の出没情報もあり、物理的な危険も存在する。跡地周辺の林道は狭く、大型車の通行は困難で、冬期は積雪のため通行不能となることもある。南砺市は跡地の今後の活用を検討しているが、現時点では具体的な計画は決まっていない。心霊現象を期待して跡地周辺に長時間滞在することは、山間部での遭難リスクもあり危険である。また、近隣には少数ながら住民が生活しているため、騒音や不審な行動は迷惑となる可能性がある。
訪問のポイント
現在は建物が解体されているため、かつてのような心霊体験は期待できないが、跡地周辺では現在も現象の報告が続いている。目撃談は夕暮れ時から夜間にかけて多いが、山間部の危険性を考慮し、昼間の見学に留めることを強く推奨する。アクセスはJR城端線福野駅からタクシーで約20分、または自家用車で東海北陸自動車道福光ICから約15分である。周辺道路は狭く、駐車場もないため、路上駐車は交通の妨げとなり危険である。周辺には五箇山の合掌造り集落や井波彫刻の里などの観光地もあり、世界遺産や伝統工芸と組み合わせた観光が可能である。また、南砺市内には他にも温泉施設が多数あり、健全な温泉巡りと組み合わせることもできる。坪野鉱泉の歴史に興味がある場合は、南砺市立図書館で関連資料を閲覧することをおすすめする。ただし、山間部での単独行動は避け、必ず複数人で訪問し、天候や時間帯に十分注意することが重要である。また、野生動物との遭遇に備えた準備も必要である。