母子の霊が彷徨う明治の廃隧道…滋賀・福井県境の「旧風吹(かざふき)トンネル」 滋賀県長浜市と福井県南条郡南越前町の境、かつての北陸道の峠に、まるで異界への入り口のようにぽっかりと口を開ける廃隧道があります。「旧風吹トンネル」。
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母子の霊が彷徨う明治の廃隧道…滋賀・福井県境の「旧風吹(かざふき)トンネル」
滋賀県長浜市と福井県南条郡南越前町の境、かつての北陸道の峠に、まるで異界への入り口のようにぽっかりと口を開ける廃隧道があります。「旧風吹トンネル」。明治36年に完成したこのレンガ造りのトンネルは、全長500メートルを超える暗闇と、内部で母子が亡くなったという悲しい噂から、関西・北陸地方を代表する最恐クラスの心霊スポットとして知られています。
心霊スポットとしての旧風吹トンネル:出口のない闇と母子の怨念
このトンネルが心霊スポットとして恐れられる理由は、その物理的な構造と、ここで起きたとされる悲劇的な物語にあります。全長524メートルという、照明のない廃トンネルとしてはあまりにも長い暗闇は、訪れる者の方向感覚と理性を奪います。そして、この閉鎖的な空間で、ある親子が心中を遂げた、あるいは事故で亡くなったという噂が広まり、成仏できない母子の霊が、今もなおトンネルの中央付近を彷徨い続けていると信じられているのです。
歴史的背景:明治の手掘り隧道と悲劇の噂
旧風吹トンネルは、1903年(明治36年)に完成しました。当時の最新技術であったレンガ巻きで造られてはいるものの、その多くはツルハシなどを使った人々の手によって掘り進められたと言われています。かつては福井と滋賀を結ぶ重要な交通路として多くの人々や物資がこのトンネルを行き交いました。
しかし、道幅が狭く、長いトンネル内には照明もなかったため、内部では多くの交通事故が発生したと伝えられています。心霊スポットとしての噂が広まったのは、そうした事故の中で「母子が亡くなった」という話がきっかけです。やがて、より安全な新風吹トンネルが完成すると、旧トンネルは役目を終え、現在は通行不能の廃隧道となりました。しかし、完全に封鎖はされておらず、徒歩での進入が可能なため、その恐怖は今もなお多くの肝試し好きを惹きつけてやみません。
怪奇現象・体験談:トンネル中央に立つ母子の霊
この長く暗いトンネルでは、亡くなったとされる母子の霊に関連する、数々の恐怖体験が報告されています。
- 母子の霊 このトンネルを象徴する最も有名な怪奇現象です。全長524メートルのちょうど中間地点あたりで、母親と幼い子供の霊が手をつないで立っている姿が目撃されています。車で通りかかると、急に目の前に現れたり、ボンネットに「ドン」とぶつかってきたりすると言います。
- 赤ん坊の泣き声 トンネルの暗闇の奥から、助けを求めるような赤ん坊の甲高い泣き声が聞こえてくるという体験談も非常に有名です。
- 入り口に立つ白い服の女性の霊 滋賀県側、あるいは福井県側のトンネル入り口に、白い服を着た髪の長い女性がたたずんでいるという目撃談もあります。トンネルの中へ入る者を、じっと見つめているそうです。
- 原因不明の車両トラブル トンネルに近づいたり、内部に侵入したりすると、車のエンジンが停止したり、ライトが消えたりといった、原因不明の車両トラブルに見舞われるという報告も多くあります。
現地の状況・注意事項:侵入可能だが極めて危険な廃隧道
- 現在の状況 旧風吹トンネルは、現在、車両での通行は不可能ですが、両側の入り口は封鎖されておらず、徒歩で内部に侵入することが可能です。しかし、内部は完全に光がなく、水没している箇所や、壁面が崩落している箇所もあり、極めて危険な状態です。
- 立ち入り禁止区域 公式に立ち入りが禁止されているわけではありませんが、管理されていない廃隧道であり、侵入は自己責任となります。
- 安全上の注意点 内部への侵入は極めて危険です。 全長500メートルを超える完全な暗闇であり、懐中電灯などの照明器具がなければ、方向感覚を失い遭難する危険性があります。足元はぬかるみ、水没しているため、長靴などの装備も必須です。また、崩落の危険性も常に伴います。
- マナー・ルール ここは悲しい伝説が残る場所です。もし訪れる際は、静かに手を合わせ、この地に眠るかもしれない魂の冥福を祈ってください。内部にゴミを捨てたり、落書きをしたりする行為は厳禁です。
訪問のポイント
- おすすめの時間帯 心霊スポットとしての雰囲気を味わいたいのであれば深夜となりますが、前述の通り多くの危険が伴います。
- 特定のスポット 怪奇現象の噂は、「トンネルのちょうど中間地点(母子霊)」と、「両側のトンネル入り口(女性の霊)」に集中しています。